不登校のその後
学校の外から、その先の人生を考える。
就職・キャリア

不登校からお金持ちになりたいなら

最終更新 2026-08-27 | 体験・私見

不登校を経験した人が「お金持ちになりたい」と思うのは、悪いことではありません。むしろ、これからの日本では、それなりのお金がないと食べていけなくなると私は考えています。ただし、その道は「良い会社に入って年収を上げる」だけではありません。

この記事は運営メンバーの体験と私見にもとづくものです。制度・税務・投資の判断は一次情報と専門家で確認してください。

このページの要点

  • 会社員として高い年収を得ても、税と社会保険料でかなりの部分が消える。私自身、平均よりかなり高い年収でも生活はさほど豊かではない
  • 会社員の年収には上限がある。中小企業のオーナーは、平凡な事業でも上場企業の役員より稼いでいることが珍しくない
  • ただし、普通の社長の多くは収入が不安定で豊かさを実感していない。狙うなら「専門性×小さく始める」

年収が上がっても、生活はさほど豊かにならない

先に自分の話をします。私は今、外資系のテクノロジー企業で働いていて、年収は日本の平均よりかなり高い水準です。不登校から高認、大学、就職と進んできた人間としては、収入の面では「上手くいった」ほうだと思います。

ところが、生活はさほど豊かではありません。贅沢をしているわけでもないのに、手元に残るお金は、年収の数字から想像されるよりずっと少ない。

理由の一つは、昨今のインフレと円安です。ただ、それ以上に大きいのが、税金と社会保険料の負担率です。所得税、住民税、健康保険、厚生年金。給与が上がるほど、引かれる割合も上がります。額面が増えても、使えるお金は比例して増えません。

そして、この負担は今後さらに重くなるだろうと私は見ています。少子化で現役世代は減り続けているのに、社会保障の支出は簡単には減りません。現役世代の負担で支える今の形を、このまま維持するのは難しいのではないか。これは私の見方で、専門家の間でも議論のあるところですが、少なくとも「これからは誰もが、それなりのお金を持っていないと厳しくなる」という感覚は、持っておいて損はないと思います。だから「お金持ちになりたい」は、不登校を経験した人にとっても、まっとうな目標です。

会社員の年収には、上限がある

では、どうやってお金を持つのか。多くの人が考えるのは「良い大学に行き、良い会社に入り、年収を上げる」ですが、この道には上限があります。

アゴラに掲載された黒坂岳央氏の記事「世の中で最も過小評価されている職業」は、その上限を指摘しています。残業をしても優良企業に勤めても、会社員の年収はおおむね2,000万円前後で頭打ちになる、というのが同氏の見方です。一方で、中小企業のオーナーは事業が当たれば収入に上限がなく、事業に必要な支出は会社の経費として利益から差し引かれる。会社員が税引き後の手取りから支出するのとは構造が違う、と同氏は書いています。

もう一つ、Books&Appsの安達裕哉氏の記事「真の金持ちは『中小企業のオーナー』であると知ったときの話」は、コンサルタントとして多くの企業を見た経験から、同じことを別の角度で述べています。年商10億〜20億円程度の、特に珍しくもない会社のオーナー社長が、上場企業の役員を超える報酬を得ていることは珍しくない。そして、それは唯一無二のビジネスである必要はなく、代理店、フランチャイズ、受託や下請けのような平凡な事業でも成り立っている、という観察です。

私が会社員として実感しているのも同じです。年収を上げるだけを目標にしていると、税と社会保険料の壁にぶつかって、思ったほど豊かにならない。お金持ちになりたいなら、会社員として稼ぐことに加えて、自分でビジネスを持つことを考えたほうがいい。私が働いている外資系企業でアメリカの同僚を見ていると、優秀な人ほど会社を出て、自分の事業を始めていきます。会社員は通過点で、ゴールではない、という感覚が、向こうでは普通です。

中小企業オーナーが有利な理由

先の2本の記事から、オーナーが有利とされる理由を整理すると、次の4点になります。

収入に上限がない。会社員の給与は職位と会社の給与テーブルで決まりますが、オーナーの取り分は事業の利益で決まります。事業が当たれば、数年で一生分を稼ぐ人もいる、と黒坂氏は書いています。

事業に必要な支出は経費になる。事業のために使う設備や旅費、研修などは会社の経費として扱われるため、会社員が手取りから同じものを買うのとは負担が違います。ただし、何が経費として認められるかは税法で決まっていて、私的な支出を経費にすることはできません。この線引きは国税庁の公開情報と税理士で確認する必要があります。

平凡な事業でも成り立つ。安達氏の観察で私が一番重要だと思うのは、「経営者の能力は普通の人と変わらない」という指摘です。儲かるかどうかを分けるのは能力ではなく、商売を自分で始めるかどうかだ、と同氏は書いています。

働き方を自分で決められる。出社時間も休暇も、誰にも咎められずに決められる。黒坂氏はこれを、収入と並ぶ二大メリットに挙げています。

安達氏の記事は、平凡な事業で富むのは基本的にオーナーだけで、社員の給与は上がりにくい、という中小企業の構造にも触れています。この構造は、社員として入る側から見れば厳しい話ですが、裏返せば、なぜ「雇われる側」より「持つ側」が有利なのかの説明でもあります。

ただし、普通の社長の多くは豊かではない

ここで、逆の見方も紹介しておきます。東洋経済オンラインの日沖健氏の記事「中小企業オーナーは最強のおいしい職業なのか?」は、コンサルタントとして見てきた「フツウの社長」の実態を書いています。額面の年収は400万〜2,000万円程度で、世間の会社員と大きく変わらない。しかも中小企業は経営体力がないため、少しの環境変化で業績が悪化し、収入が激減する。だから多くの社長は豊かさを実感できておらず、常にお金の心配をしている、という内容です。

同じ記事では、仕事のやりがいについても否定的な声が多かったと書かれています。受注の確保と従業員のマネジメントに疲弊した設計事務所の経営者、人と接するのが苦手で従業員の不満や顧客のクレームを聞くのが苦痛だというホテル経営者。

この最後の例は、不登校を経験した人にとって、特に重要です。オーナーになれば人間関係から解放される、というわけではありません。従業員を雇えば従業員との関係が、顧客がいれば顧客との関係が、会社員時代とは別の形で乗ってきます。私自身、人間関係で消耗して大企業を辞めた人間なので、ここは軽く見ないほうがいいと思っています。

不登校経験者が狙うなら「専門性 × 小さく始める」

3本の記事を読んで、私が不登校経験者に勧める道は、こうです。

まず専門性を身につける。これがすべての土台です。技術、資格、特定分野の知識。専門性があれば、会社員として稼げるし、その専門性をそのまま商品にして自分の事業を始められます。大学選びの記事で「良い大学より専門性が身につく大学」と書いたのは、この話につながっています。

会社員として稼ぎながら、小さく始める。いきなり会社を辞めて起業する必要はありません。安達氏も、副業でもアフィリエイトでも何でもいい、始めてみれば意外に簡単だと分かる、と書いています。会社員の収入で生活を支えながら、小さな商売を試す。当たれば広げる。当たらなければ別のことを試す。この順序なら、東洋経済の記事にあるような「収入が激減する」リスクを、生活に直撃させずに済みます。

人を雇わない形から入る。不登校を経験した人は、集団の運営や対人の調整が苦手なことが多い。それなら、最初は自分一人、あるいは外注で回る事業を選ぶ。専門性を売る仕事は、この形と相性がいいです。人を雇うかどうかは、事業が回ってから考えればいい。

このサイトを一緒に作っている塾長も、会社員を経て学習塾を開いた人です。不登校から高認、大学、就職、そして自分の事業。この順序で歩いた人が、身近に一人います。

お金の話を避けない

不登校の「その後」を考えるとき、進路や就職の話はよくされますが、お金の話は避けられがちです。でも、生きていくのにいちばん直接的に効くのはお金です。税と社会保険料の負担がこれから重くなる中で、会社員として年収を上げる一本道だけに頼るのは、私は危ないと思っています。

お金持ちになりたいなら、会社員として稼ぐ力と、自分で商売を持つ力の両方を、早いうちから視野に入れておく。不登校を経験して一本道から外れた人は、もともと別のルートを歩く練習をしてきています。その経験は、この場面でも使えます。

この記事は個人の経験と公開記事にもとづく私見で、税務・投資の助言ではありません。税や社会保険の制度は変わります。経費の扱いなど税に関する判断は、国税庁の公開情報と税理士等の専門家に確認してください。

参考記事