不登校のその後
学校の外から、その先の人生を考える。
大学進学

良い大学を選ばなくてもいい?

最終更新 2026-08-27 | 体験・私見

不登校や高認からの受験だと、「せめて良い大学に」と思いがちです。ただ、私の観測範囲では、良い大学に行った人の予後が必ずしも良いわけではありませんでした。自分自身も含めてです。

この記事は運営メンバーの体験と私見にもとづくものです。制度・税務・投資の判断は一次情報と専門家で確認してください。

このページの要点

  • 偏差値の高い大学は、学力だけでなく対人能力の高い人が集まる場でもある。そこで求められる力は、不登校経験者が苦手にしやすい力と重なる
  • 会社に入ってからも同じ。実務能力より人間関係で消耗して辞める例は珍しくない
  • 「良い大学」ではなく、きちんと専門性が身につく大学を選ぶ。専門性は人間関係が苦手でも生き残れる足場になる

良い大学に行った人が、その後うまくいっているとは限らない

先に断っておくと、これは統計の話ではなく、私の観測範囲の話です。大学の同級生、職場の同僚、不登校や中退を経て進学した知人。20年近く見てきて感じるのは、いわゆる「良い大学」に入った人の予後が、必ずしも良いわけではないということです。

難関大学を出て大企業に入り、数年で心身を崩して辞めた人がいます。逆に、偏差値でいえば決して高くない大学を出て、地味な専門職や地元の会社で、無理なく長く働いている人もいます。大学の名前と、その後の人生の安定は、思っていたほど連動していませんでした。

もちろん、良い大学に行って良い会社に入り、そのまま順調に進む人もたくさんいます。「良い大学は無意味だ」という話ではありません。ただ、不登校を経験した人がこれから大学を選ぶなら、名前以外に見ておくべきことがある、という話です。

偏差値の高い大学は、対人能力の高い人が集まる場でもある

ここが、私が一番伝えたいところです。偏差値の高い大学に集まるのは、学力が高い人だけではありません。私の見た範囲では、将来社会で求められる能力、特にコミュニケーションの力が高い人が多かった。授業の内容そのものより、その場にいる人たちの「社会性の水準」が高いのです。

これは進学先として魅力でもあり、同時に落とし穴でもあります。周囲の水準が高いということは、そこで求められる立ち回りの水準も高いということです。グループでの動き方、初対面での会話、先輩や教員との距離の取り方、就職活動での自己表現。全日制高校で3年間、集団の中で過ごしてきた人が自然に身につけている力を、不登校の期間にはほとんど練習できません。

私自身は、不登校の期間に集団生活の経験が少なかったため、大学に入ってから対人面でかなり戸惑いました。学力で追いついても、こちらの差はなかなか埋まらなかった。同じような人は、ほかにもいるかもしれません。

会社に入ってからも、同じことが起きる

これは大学で終わる話ではありません。会社に入ると、もっとはっきりします。

職場には、意地悪な人や攻撃性の高い人が普通にいます。どの会社にもいます。そういう人と一緒に働き、受け流し、時には対抗し、それでも仕事を回していく力が求められます。実務ができるかどうかとは別の力です。そして、私にとっては、この力がいちばん苦手なものでした。

私は大学を出たあと、いくつかの会社を経て、Core30に名前が挙がるような会社に入りました。学歴の面では「上手くいった」部類だと思います。ただ、そこで辛かったのは実務ではありませんでした。人間関係と、会話の力です。仕事の中身よりも、人とのやり取りで消耗して、続けられなくなりました。

「あんないいところを、どうして」と言われながら退職しました。今は外資系の企業で、技術職として働いています。会話や根回しより、何ができるかで評価される場所のほうが、私には合っていました。

「良い大学」ではなく「専門性が身につく大学」を選ぶ

ここまでを踏まえての結論です。不登校を経験した人が大学を選ぶなら、偏差値や知名度より、きちんと専門性を身につけられる大学を選ぶほうがいい。

理由は単純で、専門性は人間関係が苦手でも生き残れる足場になるからです。「この人はこれができる」という評価は、会話がうまくなくても、根回しが下手でも、ある程度までは通用します。逆に、専門性がないまま人間関係の力だけで評価される環境に入ると、不登校経験者はいちばん苦手な土俵で戦うことになります。

専門性が身につく大学とは、必ずしも有名大学ではありません。工学、情報、医療系、会計、建築、語学など、卒業時点で「これができる」と言える分野があり、カリキュラムがそこに向かって組まれている大学です。就職実績を見るときも、有名企業の名前より「どんな職種に就いているか」を見たほうが、この観点では役に立ちます。

それでも難関大学を目指すなら、それはそれで構いません。ただ、入ったあとに待っているのが学力の競争だけではないことは、知った上で選んでください。

大学は、人生の目的ではなく足場

不登校や中退のあとに大学を目指す人は、どこかで「良い大学に入れば、遅れを取り戻せる」と考えがちです。私もそう考えていました。でも、実際に取り戻せたのは、大学の名前ではなく、そこで身につけた具体的な技術のほうでした。

大学は目的ではなく、自分で食べていくための足場です。その足場として、どこが自分に合っているか。人間関係が得意でない自分が、それでも通用する分野はどこか。そういう目で選ぶと、答えは偏差値表とは違うところに出てくることがあります。

高認からの受験そのものについては高認から大学受験する方法、高認合格後に自分の学力を測った話は高認と大学受験はまったく別物だったに書いています。仕事の選び方は不登校経験者に向いている仕事へ。